[本][英語] 推量の助動詞 will と must の対比

以前の記事では、推論用法の must「~にちがいない」とshould「~のはずだ」「きっと~だ」を取り上げた。日本語訳として表出する以前の意味の違いがあった。

今回は推論用法の will「~だろう」を取り上げて、must と対比的に理解をする。

柏野 (2012) によると、推論用法の mustは「現在入手できる情報」または「以前からの知識」に基づく推論であり、一方、willは「以前からの知識」に基づいた予測である。「以前からの知識」は「常識」「経験」などのことである。表にまとめてみよう:

助動詞 現在入手できる情報 以前からの知識
must
will ×

柏野 (2012) の例を利用して具体的に説明しよう。must による推論は「現在入手できる情報」「以前からの知識」のどちらを根拠とできる。なので:

  1. A: Someone's knocking at the door. (誰か、ドアをノックしている)
というAさんの発話に対して、
  1. B: That must be Linda; only Linda knocks that way.
  2. B: That must be Linda; she said she would come today.
のどちらの答え方もできる。前者は「ああいうノックの仕方はリンダしかいない」という「現在入手できる情報」を基にした推論であり、後者は「リンダは今日来るって言っていた」という「以前からの知識」を基にした推論である。一方で、willの場合は:
  1. B: × That will be Linda; only Linda knocks that way.
  2. B: That will be Linda; she said she would come today.
というように、「以前からの知識」に基づく予測しか許されない。

最後に、確信の強さについて柏野 (2012) から引用しておこう。

...一般にイギリス英語では must のほうが will よりも確実度が高く、アメリカ英語では will のほうが must よりも確実度が高い...
(ibid.: 38)
Forest は推量用法の willに対して「たぶん~だろう」という訳を当てているが、少なくともアメリカ英語であれば「たぶん」は不要と言える。

助動詞は調べれば調べるほど面白いし、わかるようなわからないような感じが募っていく..

  • 柏野健次. (2012). 『英語語法詳解―英語語法学の確立へ向けて』. 三省堂

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